ベテランが勝てなくなった理由

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将棋の羽生善治が竜王など六つのタイトルを独占して「羽生フィーバー」が吹き荒れていたころの話だが、米長邦夫永世棋聖が、企業のトップを前に経団連で講演した。
 「自分たちベテランはなぜ、若手の強豪に勝てないか」がテーマだった。

 米長氏も羽生氏に名人位を奪われている。「ベテラン棋士は得意の戦型を忘れられない。それを用いて勝った記憶が忘れられない。もうその戦型は通用しなくなっているのに・・・・」苦い経験をふまえて米長氏はそういった。

会場は水を打ったかのようにシーンとなった。それは、産業史の中にも実例があることを聴衆の企業経営者たちが知っていたからだろう。
 自動車のブレーキは、円盤を両側から挟みつけるディスク・ブレーキが主流だが、高速時の性能にすぐれたこのブレーキの導入は、自動車産業の聖地アメリカが最も遅かった。旧式で圧勝した過去の記憶にとらわれ、新式への切り替えをためらったというのが定説になっている。
塩野七生(1937~)は「ハンニバル戦記」の中で「年齢が頑固にするのではない。成功が頑固にさせる。そして、成功者であるが上の頑固者は、状況が変革を必要とするようになっても、成功によって得た自信が、別の道を歩ませることを邪魔するのである。」
これは、ローマ帝国の将軍ファビウス・マクシムスについて記した一節だが、将棋にも自動車にもあてはまる。
得意の戦型をものにした、と思ったとき、人は衰亡の入り口に立っているらしい。
 
わたしが、中学野球だけではなく高校野球を見学するようになったのは、この事実を知ったためです。